第11話 嫌われ先生

理容専門学校には非常に嫌われている先生がいた。私も大嫌いであった。しかしこの年になって考えると、嫌われ先生は組織の中で悪役をしていた様な気がする。この悪役先生の御蔭で、人気の或る先生が存在出来た様な気がする。何事も理想だけでは成り立たない処がある。現実問題として、感じの悪い事を感じ悪く言わなくてはならないことも在る。

人気の在る先生がそれを言ったら、人気は無くなる。しかし、誰かが言わなくてはならない。そこで悪役先生の登場なのである。分が悪い役どころであるが、組織の中では誰かが自然に成るみたいである。

 

第10話 十二指腸潰瘍

私が修行先の店を辞めてから、半年位経った頃である。偶然に、先輩の一人に会った。先輩は十二指腸潰瘍の手術をしたのである。腹に白い包帯が痛々しく巻いてある箇所を見せながら、他の3人の先輩も、手術をしたと言った。年齢は20歳から21歳である。 続きを読む

第9話 銭湯

修行中の話しである。店主の家族は内風呂、我々従業員は近くの銭湯へ行くのである。ある夜同僚のS君と銭湯に行った。何時もなら女風呂の賑やかな声がするのだが、その日は妙に静かであった。湯船の中でS君が大きな声で奥さんの悪口を言った「奥さんは料理が下手だ。その他色々」私は、奥さんの料理は、料理以前であると思っていたので、何も言わなかった。 続きを読む

第8話 サンドイッチとカセットテープ

理容専門学校へ入学して二日目、担任のN先生が「これから席順を決める、皆さんに意見が無いなら私が決める」と、言った。私は咄嗟に、N先生は年輩なので右半分男、左半分女という席順になると思った。そうなってはつまらないと思い、挙手した。先生に言った「男と女を前後左右入れ違いにサンドイッチになるようにして下さい」クラス中に歓声が上がった。先生は私の提案をすんなりと受け入れた。 続きを読む

トニックとマッサージ - 揉んだら生えた

父が60代半ばの頃である。この頃は、店では私が主体だったので、父は暇だった。何を思ったのか、毎日、業務用トニックを頭皮に付け、軽くマッサージをしていた。私は、心の中で「そんな事をしても、その年で今更生えるか?生える分けがない」と思っていた。

ところが、 続きを読む