修行中の話しである。店主の家族は内風呂、我々従業員は近くの銭湯へ行くのである。ある夜同僚のS君と銭湯に行った。何時もなら女風呂の賑やかな声がするのだが、その日は妙に静かであった。湯船の中でS君が大きな声で奥さんの悪口を言った「奥さんは料理が下手だ。その他色々」私は、奥さんの料理は、料理以前であると思っていたので、何も言わなかった。
脱衣場で服を着ていたら、番台の隙間から奥さんが帰るのが見えた。怒っていた。この事をS君に言ったら、黒い顔が青くなった。
そういえば、風呂の釜が壊れていると言う奥さんの声が、夕食の時、奥から聞こえたのを思い出した。
その後奥さんは間接的にS君に怒っていた。私は無罪だった。其の内先生までがS君に対して怒り出した。S君は折り合いが悪くなりこの店を辞めた。
私はつくづく思った。奥さんの悪口を言うと、御主人も一緒に怒るという事を。