第10話 十二指腸潰瘍

私が修行先の店を辞めてから、半年位経った頃である。偶然に、先輩の一人に会った。先輩は十二指腸潰瘍の手術をしたのである。腹に白い包帯が痛々しく巻いてある箇所を見せながら、他の3人の先輩も、手術をしたと言った。年齢は20歳から21歳である。

医者の話だと、食事療法でも直るそうだが、奥さんが手術の方が早く直る(店の戦力になると言った)と言って、手術をさせられたと言って怒っていた。こんな店辞めるとも言っていた。

もし店に居たら私もなっていたかも知れないと思うと、辞めて良かったとつくづくと思った。

それはともかく二十歳前後の若い人が殆ど同時期、全員が十二指腸潰瘍になるという事は異常である。私は後年、この原因を私なりに考えた。

先生は借金をして、裏の空き家と土地を買い、隣の麻雀屋と共同ビルを作った。途中予定より建築費用がかさみ(特に「かつら・ウイッグ・ツーペ」の施術を行う個室に金を掛けた)。ビルが出来た頃、高利貸しより借金をした。

店の作りが以前の店より不便になった。以前だと一工程で済んだ事が5工程掛かるようになった。今までは私を叱る事で従業員全体に先生の意向を伝えていたのが、私が店を辞めてからそれが上手く出来なくなった。即ち、私が店全体のストレス発散場であったのが、私が辞める事により、その行き場が彼方此方を駆け巡ったこともあると思われる。

兎に角、此れだけ短期間に、二十歳前後の人が4人も、十二指腸潰瘍になるのは異常である。先生も余程応えたのだろう。この頃姓名判断をして通名を変えた。