先生は厳しい人だった。すぐ怒るのである。従業員はいつもビクビクとしていた。皆お客の顔を見ずに先生の顔色を見て仕事をしていた。私もそうである。或る日クセ直しで失敗をした。
クセ直しは薄めたシャンプー液で頭髪を軽く揉み、その後、熱過ぎず、温過ぎずの程よい温度のスチームタオルで更に揉むのである。これを素早く行うのである。この時は、先生が遅いという顔で私を睨みつけていたのである。爆発寸前の顔である。私はやばいと思い無意識の中に急いでスチームタオルをお客の頭に巻いたのである。巻いたと同時にお客は「ぎゃー」と言った。怒った。当然である。熱いスチームタオルを頭に巻いたのであるから。
私は何度も謝り、お詫びに肩を揉んだ。そのお客はひどい肩凝りに悩んでいた。私は母の肩をよく揉んでいたのでマッサージは上手いのである。御客は喜んだ。これがきっかけで御客は私を贔屓にし、私はこの御客のシャンプー、マッサージ係りになった。