第20話 思惑外れ

私が18歳の時、父は60歳、母は57歳である。父はもう老齢であるから何時までも理容業を続けることは出来ない。私は大学へ行きたかったが当時は大学を出ても初任給が安く、家族3人が食べていくまでにはある程度の年数が必要であった。私が大学へ行くと途中経済的に困るのである。私は考えた。当時理容師は約5年間で1人前になれた。したがって5年間努力すれば私が23歳で父が65歳であるから何とか家中食べていけると思った。それで理容業に入ったのである。

ところが計算どおりにはいかず、私が修行にいって3年経ったとき、突然父が病気になったのである。父から家に帰るように言われた。未だ修行中で私に出来る技術は顔剃りとシャンプーだけである。一番大事なカット、セットは出来ないのである。しかし、帰ることになった。父は私に言った「後はお前やれ」私は困った。しかし悩んでいる暇はなかった。兎に角、やるしかなかったのである。