第27話 飛びつき蛙

父は、私のことを冗談半分で「飛びつき蛙」と評していた。ある時、理容器具商が新しいアイロンを持ってきた。高価だが私は迷わず買った。使ってみたが上手くいかない。如何考えてもこの道具は欠陥である。しばらくしたら他のメーカーから、もっと良い物が出た。高価だったが迷わず買った。今度のは非常に上手く出来る。

他の店では未だやっていない新技術である。感覚も新しい。評判が評判を呼び、遠くから来店する御客も多くいた。この技術でつくるヘアースタイルは、その後5年ぐらい流行った。

最初は下手だったが、他の店では未だやっていないので、新しい技術をするというだけで御客は来た。しばらくして、他の店がやりだしたが始めは下手だ。その頃は、私はものすごく上手くなっていた。他の店よりダントツに上手いのである。

理容師の中には、上手くいかないのは自分の技術が未熟だからだと、どこまでも思う人がいる。しかし、道具が悪ければ誰がやっても上手くいかないのだ。欠陥アイロンを買った人が、4年経った頃「僕は、どうもこの技術は下手だ。何度練習しても上手くならない」と、ぼやいていた。