私は刃物を研ぐのが下手だった。600倍まで見える金属顕微鏡を買って、刃の付き方などを研究した。それでも駄目だった。困った。何とかならないものかと日夜考えた。
高い金を出して道具を買った。一つ目は全く使い物にならなかった。二つ目は多少使えた。三度目のものは偶然見つけたのであるが、此れは良かった。これを使うことによって他店より遙かに評判が良くなった。この技術的優位はその後、数年続いた。
私は考えた。今までこんな良い道具があるということを何故知らなかったのだろうか?色々考えて分かった。同業者はライバルである。いくら組合があってもライバルである。競争が激しい。したがって、良いものを他店に教えると、それだけ自店が不利になるので、良いものほど教えないのだ。したがって、理容業界は良いものほど売れないのだ。
この体験から、たとえ、自分にとって現在必要がないと思うものでも、機会があれば「ついでに」とにかく見えるだけ見ることにした。