当時、名古屋の殆どの中学校では男子生徒の髪型は丸刈りとされていたが、年々校則が変更になり、長髪(今の自然な髪型ではなく、耳の周りを丸くキッチリと揃え、後頭部は刈上げの髪型、したがって一月か一月半には調髪をしなければならなかった)を認める中学校が増えていった。これはその過度期の話である。
先生はなるべく短めの丸刈りを指導していたのだが、一部の生徒は短い丸刈りはいやなので先生に逆らって「なるべく長めの丸刈り」にしていたのである。そんな時、或る生徒が髪を剃って「つるつる頭」にしてきた。それを見て校長は、朝礼の時に、その生徒を全校生徒の前で褒め称えた。次の年、その学校では校則から丸刈り強制を削除した。普通の長髪をしたい生徒は長髪を、丸刈りをしたい生徒は丸刈りをというように自由になったのである。
ところが、去年褒められた生徒は、また今年もと思い「頭をつるつるに剃ってきた」のである。ところが、である。周りが長髪の時、一人だけつるつるに剃ってきたということで、いくらなんでも「やり過ぎだ」ということで、今度は叱られたそうだ。
今でこそスキンヘッドは普通のヘアースタイルであるが、当時は暴力団員か坊さんの一部(坊さんでも剃っている人は稀であった)、テレビアニメの一休さんぐらいだった。これは、そんな時代の話である。