この店のメニューの一つにオイルシャンプーがあった。これは発毛、フケ止めに効果があったと思う。程好く暖めたオリーブ油に硫黄を適量入れ、頭皮に付け、赤外線を適当な時間照射し、マッサージを行い、あと普通にシャンプーをするのである。これによって頭皮の血行をよくし、発毛を促すのである。この赤外線照射は、薬の副作用等で脱毛した患者の発毛を促す為に、当時、病院でも盛んに行われていた。
オイルシャンプーをする御客は一日に3~4人あった。皆、気持ち良さそうであった。この気持ち良いという事がストレスを取り、ストレス性脱毛を予防した効果が有った事は間違いないと思う。
この頃の御客はとにかく忙しく「価値を確認出来ない時間を、たとえ一分一秒でも過ごすという事」は、罪悪だったようである。この罪悪感は強迫観念として当時の社会に蔓延していたように思われる。そういう時代だったのだ。したがってストレスによる胃潰瘍が多かったと思う。
そんな中、「理容をするという行為は、身だしなみを整えるという価値有る時間を過ごすという事であって、決して無駄な時間を過ごす事ではない」という理由で、御客は安心して理容したのである。理容中のこの暫しの休息がストレスを取ったのだと思う。