昔は今とは違い、正月を迎える前には調髪をするという習慣がありました。そのため、どこの理容店でも12月も25日頃から混んできて、最後の29日、30日、は朝から満員で夜の11頃まで連続で仕事をしていました。特に大晦日は明くる日の3時頃まで仕事をしました。 続きを読む
「修行編」カテゴリーアーカイブ
第13話 業界視察
閉店後、先生が弟子を集めて、重々しく「理容業界発展の為、此れから私は台湾の理容業界の視察に行く。一週間程店を空けるが、宜しく頼む」と、言った。
我々弟子は、直立不動で「先生、店は我々がしっかりと守ります、安心して業界の為に、頑張ってきて下さい」と言った。
先生が奥へ行ってから、先輩が言った。「先生は、台湾へ女を買いに行くのだよ」
一週間経って先生が帰ってきた。閉店後、台湾の業界の話しをした。しかし、元気がない。先輩が言った。「病院へ行って、検査が陰性という事がはっきりするまでは、奥さんに拒否され、風呂は最後だそうだ」
その後一週間先生は元気がなかった。
第12話 予備校
私が理容専門学校へ入学して、間もなくして西側に数階立ての予備校が出来た。朝礼の日、運動場で校長先生が訓話をしている最中、初めの内は数名だったが、その内皆が予備校の方を見だしたのである。私も見た。吃驚した。予備校の最上階で男女の生徒が抱き合ってキスをしているのである。窓ガラス越しに、まともにはっきりと見えるのである。校長先生も他の先生も生徒も全員、食い入るように見た。どの位時間が経ったのか、やがて二人は別れ建物の両側にある階段を別々に下りて行くのである。それもくっきりと臨場感をもって見えるのである。
二人が1階に近づく頃、校長が「おほん」と言って、話を続けた。
平和な時代だった。
第11話 嫌われ先生
理容専門学校には非常に嫌われている先生がいた。私も大嫌いであった。しかしこの年になって考えると、嫌われ先生は組織の中で悪役をしていた様な気がする。この悪役先生の御蔭で、人気の或る先生が存在出来た様な気がする。何事も理想だけでは成り立たない処がある。現実問題として、感じの悪い事を感じ悪く言わなくてはならないことも在る。
人気の在る先生がそれを言ったら、人気は無くなる。しかし、誰かが言わなくてはならない。そこで悪役先生の登場なのである。分が悪い役どころであるが、組織の中では誰かが自然に成るみたいである。
第10話 十二指腸潰瘍
私が修行先の店を辞めてから、半年位経った頃である。偶然に、先輩の一人に会った。先輩は十二指腸潰瘍の手術をしたのである。腹に白い包帯が痛々しく巻いてある箇所を見せながら、他の3人の先輩も、手術をしたと言った。年齢は20歳から21歳である。 続きを読む